第40章 回収野郎
「ケン。」
昼過ぎ。
公園のベンチでパンをかじりながら加藤が口を開いた。
小さな子供連れの奥様方がそこを避けている。
昼休憩の営業マンも足を翻した。
「なんスか?」
牛乳の小さいパックの先がつぶれたストローを口から放すと、建一は加藤を見た。
彼はストローを噛む癖がある。
「絶対に回収相手に情けかけたらアカンで?」
「急にどうしたんスか?」
「いや、昔ワシがまだ下積みやった頃、仲の良い同期の奴がおったんや。そいつ"坂下"ちゅう名前の優しい男やった。極道向いとらんでな、しょっちゅう兄貴に怒られとったわ。」
「はぁ…?」
建一は牛乳を啜る。
「あれは俺が16の時や―――」