第40章 回収野郎
「オッチャン、オバチャンまた来たで。」
「ま…また、あなたですか。」
パチンコフィーバー真っ最中。
加藤の声に初老の白髪混じりの男と、茶髪のヨレヨレの服を着た女がゆっくりと振り向く。
「おぅ、今日回収日やで?表出りーや。」
「え?今?今ちょうど確変が――」
「そんなん知らん。はよ出らんと知らんで?」
ボキボキボキ―――
加藤の拳が鳴った。
「はっはい!!」
二人が立ち上がった。
「足らん足らん足らん!!なんでいつも1万足らんのや!!」
パチンコ屋の店先で加藤が叫ぶ。
ジロジロと通行人が彼等を見ていた。
「そんなこと言われても……。」
地べたに正座をしている夫婦が彼を見上げている。
「さっきの玉、換金してきーや。」
「で…でも――」
「はよせぇ!!5秒だけ待ったる。」
「え!?」
「ごぉ……」
「ちょっ――」
「よん……」
加藤のカウントダウンが始まる。
夫婦は慌てて店内に走って行った。
そして、少しすると戻ってきた。
「どうぞ……。」
男が諭吉を一枚差し出す。
「おう、これで丁度や。ほな、また来るで。ケン、行くぞ。」
彼等に背を向け歩きだす。
「くたばれ!!」
夫婦の声がした。