第35章 地獄
"なんでもねーよ、こんな傷。それより、バイクでどっかいくか?"
傷だらけの彼がバイクに跨がりながら笑顔で手を差し出してくる。あたしは、笑顔で応えると手を握ってバイクの後ろに跨がった。
キュルルル―――
ヴォンヴォンヴォン――
彼がバイクのエンジンをかける。
"ちゃんと掴まってろよ?"
そう言って彼はバイクを走らせた。
ゴォォォオオ―――
耳に響く風の音。
彼と一緒になれた一体感が溢れ出す。
幸せ。
ずっとこのまま続けばいいのに
"桜。"
彼がポツリと呟いた。
"わりぃ……守れねぇや。"
そう言って振り向いた彼の顔は、悪魔のようなイアンの顔だった。