第35章 地獄
あれからイアンはベッドであたしに背を向けて横になっている。
寝ているのかどうかは分からない。
あたしは、冷たい壁に背を預けて座っている。
首輪に付けられた鎖はまだ彼が握っている。
だから、逃げる事が出来ない。
どっちにしろ、逃げる気力はもうない。
今日は疲れた。
色々ありすぎて。
帰りたい。
膝に顔を埋める。
目を閉じると、
赤い髪が、
彼の大きな背中が、
彼の笑顔が、
彼の全てが浮かんでくる。
会いたい。
大好きな彼に会いたい。
自然と涙が溢れてくる。
声を出したらアイツにばれる。
声が出ないように唇を噛んだ。