第4章 彼と彼
「どうした?」
放課後、駅のホーム。
先輩と二人で電車が来るのを待っていた。
「なんかあった?」
心配そうに見下ろしてくる彼。
やめて。
優しくしないで。
つらくなる。
「あのさ…。」
あたしは彼を見上げて前を見た。
「あたしたち……―――。」
「言うな。」
誠也君はあたしの言葉を遮るようにいった。
なんで、
なんで言わしてくれないの?
あたしズルい女なのに。
あなたといる資格ないのに。
「あたし…松崎君の家に行く約束した。断れなかった。誠也君がいるのに。…一回ならいいよって言っちゃった。」
涙が溢れそうになる。
なんであたしが泣くの?
辛いのは彼のほう。
それなのにあたし……
やっぱりズルい。
「それでもいい。」
「また…キスしちゃった。」
「それでもいい。」
「松崎君のこと……」
「それでもいいっていってんだろうが!!」
彼の声がホームに響く。
周りの人達が何事かとこちらを見ている。
「…なんで?あたし……最低なんだよ?」
「だから?」
「だって、誠也君の事大好きだけど松崎君の事……。」
「知ってる。」
「だからあなたといる資格ない!!」
あたしは彼を見た。
彼は目を一瞬反らすとふっと笑った。
「そんなん誰が決めた?」
「…え?」
「資格とかそんなん関係ねーだろ。」
照れくさそうに頭をかく。
「俺はお前といっしょにいてぇ。お前は…俺といっしょにいたいか?」
あたしは頷いた。
「ならずっと一緒にいろ。…否、いてください。」
彼は頭を下げた。
あの彼が。
県内最凶といわれているあの彼が、こんな最低なあたしに頭を下げた。
なんで?
目から涙が溢れてきた。
「……はい。」
あたしはそう返事した。