第31章 孤独
今から十九年前――
日本。
暑い夏の日に彼は産まれた。
ニッコリ笑う母の腕の中で亜久里は眠っていた。
イギリス人である父の姿はなかった。
父は、母とは違う女と遊んでいたのだ。
その五年後、妹の真矢が産まれた。
たまに帰ってくる父親の気まぐれで出来た子供だ。
それでも、亜久里は妹が大好きだった。
もちろん、母親も。
「お兄ちゃん。」
ブルーの瞳をした妹がニッコリ笑いかけてくる。
サラサラとした茶色い髪と可愛い笑顔が彼は大好きだった。
たった一人の兄妹。
とても大事にした。
小学校四年生になったある日。
小学校から帰る彼は、馬場団地のゴミ山を避けながら走った。
今日は妹の誕生日。
とても楽しみだ。