第30章 恐怖
あたしと千加は走っていた。
ここまでくれば大丈夫だろう。
と、後ろを振り向く。
「………女……女……。」
が、さっきの男が後ろにいた。
「……女……。」
手を伸ばしてくる。
ゴクリ――
あたしは息を飲んだ。
後ろで千加が震えている。
ポンッ―――
彼の手があたしの頭に優しく触れた。
「何してんだテメェ!!」
遠くで誠也君が叫んでいる。
あたしは男の顔を見た。
一瞬だけど男は辛そうな顔をしていた。
「………ハァハァハァ……。」
そして、男はあたしから手を離すとフラフラと道を走っていった。