第30章 恐怖
「なんもされんかったか!?」
あたし達の所まで来た誠也君達が言った。
「…頭…撫でられた。」
状況を理解出来ずにあたしはボーッとしている。
「大川先輩!!」
後ろにいた千加が大川先輩に抱きついた。
「よかったぁ…。」
泣いている。
「お…おぅ。」
頬を赤くしながら、大川先輩は頭を掻いた。
彼女を抱きしめようとする手が宙をさ迷っている。
「どうした桜?」
目の前に立った血だらけの彼が不思議そうに見ている。
「あの人悪い人なのかなぁ。」
あたしは男の去っていった方を見つめた。
「はぁ?」
「うぅん、なんでもない。」
笑顔で彼を見た。