第30章 恐怖
「…大川先輩が…死んじゃったらどうしよう…。」
「大丈夫だよ、誠也君が行ったから。」
泣いてる千加の背中をあたしは撫でていた。
でも、あたしも不安だった。
あれから、彼が戻って来ないから。
嫌な予感が頭を過る。
「あ…。」
そんな時、彼が走っていた方から人が走ってくる。
遠くて誰だか分からない。
よく目を凝らして見る。
わずかだが、山吹色の髪が見えた。
彼じゃない。
その者は尋常じゃないスピードで近づいてくる。
逃げようにも逃げる場所がない。
あたしは、千加の前に彼女を庇うように立った。
「ハァハァ…薬薬―――。」
相手の顔が見えた。
口から大量の血を流している。
目も人を殺してしまいそうな目付きだ。
「……女……。」
男が呟いた。
足を止めてこちらを見ている。
やばい。
あたしは直感で感じた。
それもそうだが、彼と大川先輩はどうなったのか心配だ。
「……女……。」
男がゆっくりと近付いてくる。
「近寄らないで!!」
あたしは男に向かって叫んだ。
男の開ききった目がさらに開く。
「女ァァァアア!!」
男の手があたしに降りて来た。
もうだめだ。