第30章 恐怖
シュッ―――
シュッ―――
「……ちぃっ―――」
亜久里の拳を誠也君はギリギリでかわす。
早い。
薬中の割には動きに切れがある。
「ヒャハハハハ!!」
殺すのが楽しいのか亜久里は笑い続けている。
「うっとうしいっ!!」
バキッ―――
亜久里のスネを蹴飛ばす。
しかし、亜久里は体勢を崩さない。
「効いてねぇのかよ!!…クソッ!!」
バシッ―――
拳を受け止めた。
身長差があるため相手の方が少々押している。
「クソがぁっ!!」
グシャ―――
誠也君は相手の服に足を引っかけると顎に膝蹴りをした。
亜久里が血を吹き出す。
「クックックッ―――」
けれど、亜久里は笑っていた。
血を出しながら。
「なんだテメェ…化けもんかよっ!!」
彼から距離をとる。
ボタボタ…
亜久里の口から垂れた血が地面に染みを作る。
「おもしれぇなぁ……お前――。」
亜久里が走った。