第30章 恐怖
「ねぇねぇ、知ってる?」
昼休み。
トイレで化粧直しをしている美奈子が口を開いた。
「何が?」
隣の麻央が彼女を見る。
「通り魔が出るんだって…最近。」
眉毛を書きながら美奈子が言った。
「あっ、それあたしも聞いた。」
個室から出てきた早苗が手を洗う。
水の流れる音がトイレに響いた。
「物騒な世の中だよねぇ、でもあたしは平気。」
「なんで?」
皆が千加を見た。
「だって、大川先輩と帰るんだもーん。」
彼女はうっとりと携帯を眺めていた。
ひとつに結ばれた髪が揺れる。
恋する乙女だ。
「まだ、続いてたの?てかマジ?」
早苗が手を吹きながら驚いている。
「当たり前。」
「あんたの趣味わからん。」
皆があきれていた。