第30章 恐怖
「コイツイカれてる……薬中か!?」
「だろうな…トルエンくせぇ…。」
西村先輩が鼻を押さえた。
「…ふー……ふー……。」
男の息が荒い。
山吹色の髪を掻きあげる。
そして後ろで結んだ。
「殺す…殺す…まずわぁ…ひとりぃ!!」
シュッ―――
不気味に笑った顔で殴りかかる。
三善先輩はとっさによけた。
ドコッ――
「ふぐっ―――」
が、男の膝頭が腹に食い込む。
「かはっ――」
鋭い痛みが腹に走る。
胃液が飛び出した。
「ゲホッゲホッゲホッ―――」
「翔!!テメェ!!」
西村先輩が男に殴りかかった。
バコッ―――
男の左頬に命中する。
が、手応えがない。
「……クッ…クックッ――」
男がニヤリと笑った。
ドコッ―――
「ぐあっ―――」
西村先輩の鳩尾に拳が入った。
ドコッ――
ドコッ――
ドコッ――
何度も。
「ぐっ……ぶはぁっ―――」
西村先輩が血を吐き出す。
「クックックッ―――。」
けれど、男がどんどん近付いてくる。
「……やべぇ…勝てねぇわ―――」
誰かが呟いた。