第30章 恐怖
「マジで桜ちゃん、いい身体してる。突っ込みてぇ。」
「お前、誠也に殺されんぞ。」
人通りの少ない裏路地を西村先輩と三善先輩が歩いていた。
学校の帰りで、制服を緩く着ている。
ダボダボのズボンを腰に引っかけながら、派手なベルトが光った。
「でも、妄想しちまうよ……て、あぶねぇ!!清!!」
「へ?」
バコンッ―――
「かはっ―――」
西村先輩の方を向いた三善先輩が叫んだ。
その瞬間に、西村先輩の左後頭部に痛みが走る。
口から唾液が飛び出た。
少しよろめいたが、直ぐに持ち直す。
「誰だてめぇ!!」
「いてぇ…!!」
二人はその者の方を見た。
「……クッ…クックッ…クックックッ……―――。」
涎をダラダラ垂らした男が、瞳孔の開いた目で二人を見ている。
シュッ―――
「うわ!!なんだコイツ!!」
その者は応えることなく西村先輩に殴りかかった。
とっさに西村先輩は避ける。
拳は宙をきった。