第30章 恐怖
「ふーふーふー………。」
空の空き缶を鼻にあて、異様な臭いを鼻から吸い上げる。
「あー……。」
クラクラとする感覚と、万華鏡の様なキラキラとした世界が周りに広がっている。
誰からも見られないような裏路地の建物の間で、男は異世界をさ迷っていた。
いや、違う。
実体は現実にある。
感覚だけがさ迷っているのだ。
「……クッ……クックックッ……。」
瞳孔が開ききった目が出口をとらえる。
山吹色の顔にかかった髪がパラパラと揺れた。
鍛えられた身体を駆使し、順調に歩みを進める。
ポタ…
ポタ…
緩みきった口から涎が垂れ落ちる。
彼は薬物依存だった。