第1章 彼氏
「今日もありがとう。」
結局、今日もあまり会話なく自宅の前に着いた。
「…いや。」
誠也君はあたしの顔を見ずに返事した。
「またメールするね。」
「……ん。」
「バイバイ。」
あたしはそれがなんだか切なくて、彼の顔を見ずに適当に手を振って家に入った。
「おぅ、おかえ……」
バタバタバタバタ……
「…桜?」
家に入ると出かけようとする双子の弟の棗が何か言っていたが完全に無視し、慌てて二階に上がる。
そして、広い廊下の窓から外を見た。
先輩が携帯で誰かと話してる。
「いいなぁ…。」
そう呟きながら遠くなる彼を見ていた。