第28章 下と上
「ワシがこれ返しといてやるわ。」
車に乗った加藤が小瓶をふる。
「はっはい…すいません。」
助手席に乗った杉本が頭を下げる。
「エエねん、エエねん。」
瓶を置くと煙草を取り出した。
「ほな、うちまでおくろか。」
加藤はエンジンをかけた。
「帰りたくないです…。」
杉本がポツリと呟いた。
「そない言っても帰らんとオカン心配すんで?」
「心配するはずがない、薬漬けになってんだから。」
杉本は拳を握った。
「さっきもそないなこと言ってたな。あの団地はまともな奴おらんのかいな。」
煙草に火を着けると頭を掻いた。