第28章 下と上
「や…ヤクザが何の用だ!?」
山代が立ち上がった。
「ホンマ臭いわぁ、ここ。ジブン等よくこんなとこおれるな。鼻が曲がりそうやでェ。」
パタパタと鼻の前を扇子で扇ぐ。
「話聞いてんのかよ!!」
周りの男達が騒ぎ始めた。
「ケン、はよ服きーや。風邪ひくで?」
加藤は散らばった服を取ると杉本に投げた。
杉本は受け取ると慌てて服を着た。
「あと、これはうちの組の者や。返してもらうで?」
散らばった小瓶を拾い上げる。
「ほな、ケン。帰るで。」
周りの人間に興味なさそうに加藤は歩きだした。
「あ…はい。」
杉本が後についてくる。
「ちょ、待てや!!オッサン!!」
山代が加藤の肩を掴んだ。
「オッサン?」
傷だらけの顔が笑顔で振り向く。
「オッサンゆうたな?」
ニコニコと笑っている。
「オッサンにオッサン言うて何が悪いんだよ!!」
山代が睨み付けた。
「ワシャ…まだ二十三や、ドアホッ!!」
グシャッ――――
「ぐはぁっ―――」
加藤の頭が山代の顔面にめり込んだ。
血を吹き出した山代が豪快に倒れる。
そして白目を向いた。
「ヒロ――!!」
周りにいた男達が山代に集まる。
「ぬるいねん、おどれ等。ほな、行こや。」
「はっはい。」
交互に見ていた杉本が返事した。
「また、秋本とやりたいわぁ。」
加藤が呟いた。