第28章 下と上
キュッ―――
パァーン――
「どこみとんや!!おどれは!!信号赤やろが!!」
クラクションを鳴らし、窓をあけて加藤は叫んだ。
自転車に乗った人が飛び出して来たのだ。
その人は怯えたように逃げ出した。
「………たく。」
窓を閉めてアクセルを踏む。
後ろの車が車間距離をあけた。
「で、そのセンパイゆうんはどこおるん?」
ポケットから煙草を取りだしくわえる。
「……裏通りの廃墟ビル。」
「あぁ、悪ガキがよぉ集まるとこやな。」
「……うん。」
杉本は俯いて応えた。
「そない辛気臭い顔すんなや。ワシがなんとかしたる。」
加藤はワシャワシャと杉本の頭を撫でると、ジッポーで火をつけた。
「ジブン煙草吸うん?」
「……うん。」
「いるか?」
ポケットから煙草を取り出し杉本に差し出す。
「どうも。」
「ほら。」
「すいません。」
杉本は煙草をくわえると加藤から火をもらった。
ユラユラと煙が上がる。
「…俺、親が薬物依存で家に居たくなくて…。」
「それでグレたんか?」
「…えぇ。不良なったら誰にもナメられないって思って…。」
杉本は煙草をふかす。