第28章 下と上
道路を白の大きなスモーク貼りのランクルが走り行く。
男の愛車だ。
「これやったらバレんさかい。」
片手で運転しながらチラリと少年を見た。
少年は捕まえた瓶達を大事そうに抱えている。
「ワシ、加藤 道信言うもんや。岩中組の若頭…いや若衆や。ジブンの名前は?」
「…………杉本 建一(すぎもと けんいち)。」
杉本は彼を見ずに応えた。
「さよか、そないビビらんでもエエ。何もせんさかい。」
信号で車を停める。
赤だ。
「でも、なんでそないな物が必要なん?それ結構強い薬やで?一発でキマってまうわ。」
バンバンと軽くハンドルを叩く。
信号待ちが嫌いらしい。
「……先輩たちから頼まれたんだ。」
「パシリか?」
コクりと杉本が頷く。
「学校どこやねん?」
「……南善田中。」
「こっから結構近いのぉ。うちどこや?」
「……馬場団地。」
「あそこかぁ…。」
加藤は頭を下げた。
そして、信号が青に変わる。
車を動かそうとアクセルを踏んだ。