第28章 下と上
「なんやねん、ここ。めっちゃ臭うわ。ホンマここ来るの嫌やねんけどな。」
散らばるゴミ達を横目に加藤はポケットに手を入れて歩いている。
猫背のがに股で、草履が地面を蹴る音が響く。
「次は…四棟の10号室か。ここいつもおらんねんけどな…まぁ、あそこやろ。」
加藤は馬場団地の出口へ向かった。
「おぅ、オッチャンオバチャン儲かっとるか?」
爆音が響く店内の今流行りの新台機種にいた男女の肩に手を置く。
パチンコ屋だ。
「な…何ですか?」
男女は恐る恐る振り向く。
「借金回収や。利子だけでもはろーてもらうで?ほな、行こか。」
「やっやめて―――」
加藤は二人の服を掴み引きずり出す。
外へ。
「財布だしーや。」
外に出て地面に座り込む二人を上から見下ろす。
「なっないです…。」
「ないわけないやろがい!!」
加藤は男の首襟を掴むと財布を抜き取った。