第26章 頂点を狙う者
翌日。
AM10:26
岩中宅―――
「兄貴失礼します。」
豪勢な襖を開けた。
目の前に着物を軽く着こなした宗次郎が刀の手入れをしている。
これは、模擬刀ではない。
真剣だ。
「…何か用か…加藤。」
宗次郎は加藤を見ずに言った。
「いえ、最近兄貴が事務所に姿見せないんで気になりまして――」
そう言うと、加藤は宗次郎の前に正座して座った。
「…あぁ、色々忙しくてな。」
「はぁ、そうですか。」
「それに…変な噂を耳にした。」
刀の細部まで目を向ける。
「と、いいますと?」
「…組の中で変な派閥が出来てるらしい。お前知ってるか?」
鋭い眼光が加藤に突き刺さる。
「…い…いいえ。」
サッ―――
「……本当か?」
刀の刃が加藤の首に当たる。
ゴクリ―――
加藤は息を飲んだ。
汗が額からタラリと流れる。
「……まぁいい。」
カチャ―――
宗次郎はそう言うと刀を鞘に納めた。