第24章 男の中の男
PM5:00
岩中組事務所――
「兄貴、お疲れ様です!!」
「あぁ。」
事務所の部屋の入り口で、加藤と若衆が宗次郎に頭を下げた。
宗次郎は返事をするとソファーに腰掛け煙草を出した。
「兄貴。」
加藤が火を差し出す。
「…ところで、岩中興業の件どうなった。」
宗次郎が煙を吐いた。
「あいつにはもう任せられません。今度はワシが出ます。」
加藤は彼の向かいのソファーに座ると言った。
「……今は時期じゃねぇ。」
「しかし…おじきや兄貴の面子が――」
「…加藤。」
「はい。」
「何をするにしてもタイミングってのがあるんだ。ただ、突っ込めば良いってもんじゃない。分かるだろ…お前なら―――」
煙草の灰を灰皿で落とすと、鋭い目付きで加藤を見た。
宗次郎の眼光が加藤に突き刺さる。
「……はい。」
加藤の額から汗が流れる。
「悪いが、俺はまた出かける。あとは、頼んだぞ。」
彼は煙草の火を灰皿で揉み消すと、立ち上がった。
「はい。」
加藤も立ち上がる。
「お気をつけなすって。」
若衆達が頭を下げる。
「兄貴…お気をつけて。」
加藤も頭を下げた。
「あぁ。」
彼は返事すると部屋を出ていった。