第21章 儚い想い
「はぁ…はぁ…。」
薄暗い廊下をゆっくりと歩く。
一歩ずつ、一歩ずつ。
いつもの自分ならなんでもない廊下が長く感じる。
「誠也!!お前なにしてんだ!!」
前からいつもの聞きなれた親友の声が聞こえてきた。
タッタッタッタッ――――
と、靴が地面を蹴る音がする。
「お前、目覚ましたんか!?つか、部屋出てんじゃねーよ!!」
親友の怒鳴り声が耳に入ってくる。
そして、急に身体が軽くなった。
「あ…あいつ…探さねーと。」
出せる声を喉を絞って出した。
「……桜ちゃんなら……いるよ。」
親友がポツリと呟いた。
「どこに!?」
力の入らない手で、親友の胸ぐらを掴む。
「……この病院のベットに寝てる。」
「どういうことだよ!?」
「…お前のこと心配してずっと寝ないでICUの前でお前を見てたんだ。」
親友はそう言うと俺から目を反らした。
「…連れていってくれ…あいつのとこに…」
「………。」
「…会いてぇんだ―――」
「………分かった。」