第21章 儚い想い
PM9:46
「………っ……。」
ずっと倒れていた大きな手が天へ上がった。
そして、口を覆い被さる物へと伸びる。
「……っ…ハァハァハァハァ…。」
なぜ、ここにいるのか覚えていない。
ゆっくり身体を起こせば、硝子貼りの部屋にいた。
沢山機械もある。
状況が理解出来なかった。
ブチブチブチ―――――
腕に食い込む針の管を無理やり引き抜き、胸に付いた変な吸盤状の物も無理矢理取り除いた。
その者は立ち上がると、よろける足で出口へ向かった。
かなり身体が痛む。
とくに、肩や腹が。
それに、羽織っている青っぽい服も鬱陶しい。
そう思いながらも出口へ向かった。
"自分はこんなことしている場合じゃねぇんだ"
今、身体が動かせているのは根性と愛する人への思い。
まだ、自分は彼女を見つけていない。
はやく、会いたい。
重いドアを開けた。