第21章 儚い想い
AM0:15
今だ彼は眠ったままだ。
もちろん、勇人君も。
ずっと、あたしは硝子に張り付くように彼を眺めている。
"こんな怪我たいしたことねぇ"
そう言って起き上がってくれればどんなに嬉しいだろうか。
「桜ちゃん…疲れただろ?もう家に――」
「いえ、……ここにいます。」
「でも――」
「ここにいたいんです。」
あたしは藤崎先輩を見ずに応えた。
もう涙は渇れた。
泣きたくても、もう涙が出てこない。
心の中は涙の海でいっぱいというのに、あたしのからだは無情なものだ。
それから、ずっとあたしは彼を眺めていた。
半日が過ぎ、一日も二日もあっという間に過ぎた。
けれど彼も勇人君も目を覚まさない。
彼等を繋いでいる一本の管が、彼等を唯一この世に繋ぎ止めている。
もし、あの管がなければ彼等はとっくの昔に息を引き取っているだろう。
結局、彼等を助けるのはあたしではない。
あたしは何もできない。
彼等のために。
それが何より辛かった。