第3章 罪と罰
すると、誠也君の額に更に紫波が刻まれた。
彼を睨み付けているのがあたしにでも分かる。
松崎君を。
本当はもう気づいてるの?
本当はもう……すべてしってるの?
そう聞きたかったが聞けなかった。
だってまだ彼が好きだから。
誠也君のことが…。
別れたくない。
あたしって
"ズルい"
「桜。」
「え……。」
あたしが俯いていると、誠也君があたしを呼んだ。
顔を上げると生温かいものが唇に触れた。
何が起こっているか気づくのに少し時間がかかった。
「お前は俺の女だ。ガキには渡さねぇ。」
そう言って彼は教室の入口を見た。
松崎君のこと?
頭のなかで彼に問う。
「帰りまた来る。」
「……うん。」
彼はそう言って歩いていった。
ガンッ―――
松崎君が壁を蹴った。