第21章 儚い想い
「着いたよ。」
「え…?」
彼の声にあたしは顔を上げた。
あたしは目を見開く。
着いた所は市立病院がだった。
「ICUにいるはずだ、行ってあげて。」
そう言って彼はドアロックを解除した。
「あ…ありがとうございます!!」
あたしは車を降りて頭を下げた。
「いいから。あぁ…それと、これ。」
車の窓が開くと彼から小さな紙が渡される。
「俺の番号。よったら電話して、助けになるから。」
「はっはい。」
「じゃあ、行っておいで。」
「本当にありがとうございました。」
再び頭を下げる。
「あぁ。」
彼はそう言うと窓を閉めて車を走らせた。
やっぱり彼は他のヤクザ(ひと)とは違う。
あたしは、車の後ろ姿をジッと見つめた。