第20章 犠牲
「あの…。」
そんな時一人の人が口を開いた。
勇人君のお父さんだ。
「なんだよ!?」
皆が一斉にみる。
「私達、帰っていいですかね?今日パチンコ屋のファン感謝デーなんで早くいかないと――」
貧乏ゆすりをしながら頭を掻いている。
隣の母親も時間を気にしている。
「ぁあっ!?テメェ等息子が生死をさ迷ってたっつうのに、そんなにパチンコが大事なんかっ!?」
三善先輩が勇人君の父親の胸ぐらを掴んだ。
「む…息子?…私達には息子なんていませんよ。」
父親は怯えながらもあっけらかんと応えた。
「テメェ!!」
三善先輩が拳を上げた。
「やめろ!!」
座っていた藤崎先輩が立ち上がる。
「でも…拓…。」
「行きたけりゃあ…行けよ。そのかわり、二度と勇人の前に姿見せんな。一回でも見せたら俺達がぶっ殺すからなっ!!」
藤崎先輩は勇人君の両親を激しく睨み付けた。
「はっはい!!」
二人は逃げるように病院を出ていった