第20章 犠牲
「誠也!!目覚ませ!!誠也!!」
静かな病院に男の叫び声が響く。
担架で運ばれている誠也君に付き添う藤崎先輩が叫んでいるのだ。
今、彼は目を閉じたまま動かない。
体に三発の銃弾を受けてかろうじで息をしている状態だ。
傷に当てられたガーゼも真っ赤に染まり、そこからも血が滴り落ちている。
「死ぬな!!桜ちゃんに会えねぇまま死んでいいんかよ!!なぁ!!」
藤崎先輩は必死に目を覚まさない彼に呼び掛けている。
「ここからはオペ室となりますので、椅子に座ってお待ちください。」
看護師がそう言うと大きな扉が閉まった。
「…くしょう。」
椅子に座って藤崎先輩は頭を抱えていた。
「拓!!誠也どうなった!?」
三善先輩達が走ってきた。
「今…手術中。」
先輩は顔を上げない。
「…勇人は?」
そのまま尋ねる。
「……一命はとりとめたけど、いつ目を覚ますか分からないって。今ICUに入ってる。」
三善先輩は悔しそうに応えた。
「そっか…。」