第2章 転落
夜中。
あたしは眠れずにいた。
さっきの出来事。
あたしは誠也君以外の人とキスしてしまった。
それだけで罪悪感でいっぱいなのに、松崎君の事が頭から離れない。
それにさっきから電話やメールがいっぱい来てる。
もちろん誠也君だ。
"電話出ろ"
だとか
"どうした?"
とかいっぱい。
その中に誠也君以外のメールが。
"外来て。"
あたしは誰にも気付かれないように部屋を抜け出した
「来ると思わんかった。」
玄関ホールを出て死角になった木のうしろで松崎君は煙草を吸っていた。
誠也君と同じ匂い。
それだけで彼に会いたくなった。
けれど目の前にいるのは違う人。
チクリと胸が痛む。
「俺お前に嫌われてるって思ってた。」
そう言って彼は煙草を足でもみ消した。
「あたし…来るつもりなかった。」
「でも来てんじゃん。つうことは俺にも希望あんだろ?」
ニィッと笑って彼は頭を掻いた。
なんであたしここに来たんだろ…。
彼のオレンジ色の短髪が好きなわけでもない
耳のリングのピアスが好きなわけでもない。
顔が好きなわけでもない。
きっとあたしは……
彼に誠也君を重ねてるんだ。
最低。