第2章 転落
メールの内容は
"夜電話して"
と短文で書かれていた。
先輩らしいと言えば先輩らしい。
あたしは急いでお風呂に入り自由時間に玄関ロビーのソファーに腰かけた。
周りはカップルだらけで、早く彼と話したくなった。
あたしはポケットから携帯を取り出す誠也君に電話をかけた。
『……もしもし。』
4コール目で彼は出た。
久しぶりといえば大袈裟になるが、久しぶりに彼の声を聞いたような感覚になる。
「誠也君?」
『おぅ。』
「急にどうしたの?メール…。」
『いや…なんつうか…その……すっげぇ声聞きたくなったから…。』
「え……。」
誠也君の言葉に心臓が暴れだす。
やばい
うれしい。
自然と笑みがこぼれ出す
『何してる?』
「今、お風呂上がったとこ?」
『…一人?』
「うん。」
『なら………ねー……ら………なるな……。』
彼の声が乱れてきた。
電波が悪いせいだろう。
合宿所が山の近くだから仕方ない。
暫く雑音がして通話が途切れた。
それから何度も掛けなおすが繋がらない。
あたしはしかたなく諦めて携帯をしまった。
"声聞きたかった。"
その一言がなによりうれしい。
思い出すだけで笑顔がこぼれた。
「朝日、お前何してんの?こんなとこで。」
そんな時、声がした。
ハッと前を向くと松崎君がそこにいた。