第17章 危険な企み
ゴロゴロゴロゴロ…
重たいスーツケースを引く音が響く。
スーツケースと棗の小さい時の服が入った袋は誠也君が持ってくれた。
あたしは、靴の入った袋を持っている。
先程から三人の間には会話がない。
ただひたすらに、変わりゆく景色を横目に歩いている。
少し前を彼が歩いて、その隣をくっつくように勇人君がいる。
その後ろを、あたしはうつむきながら歩いていた。
「あ……。」
靴屋の前であたしは足を止めた。
子供用の赤いスニーカーが目に止まった。
そういえば、勇人君の靴…ボロボロだったなぁ。
あたしは、それを眺めていた。
「どうした?」
彼が振り向いた。
隣にいる勇人も小さく振り向く。
「…ちょっと。勇人君、ちょっとおいで。」
あたしは、勇人君を手招く。
「………。」
無言で勇人君はあたしに近付いた。
「これ、履いてみて。」
赤いスニーカーを差し出す。
「…え…。」
勇人君は驚いたようにあたしを見た。
「いいから、履いてみて。」
あたしは笑顔で言った。
「うん…。」
そう返事すると、勇人君はボロボロの靴を脱いで赤いスニーカーを履いた。
思った通りピッタリだ。
「すいませーん、これください。」
あたしは、お店の方に叫んだ。
「…え…。」
勇人君は再び驚いている。
「はーい、いらっしゃいませ。」
奥から年配の女性が出てきた。
「あのこれください。」
赤いスニーカーを指差す。
「はい、えっと……四千五百円になります。」
女性は靴のタグを見るとそういった。
あたしは財布を取りだし五千円を渡した。
「ちょっと待ってくださいね。」
女の人が店の奥に入って行った。
そして、直ぐに出てきた。
「これ、お釣りね。あとちょっと待って。」
そう言うと、女の人はしゃがんで靴のタグをハサミで切ってくれた。
「僕、この靴どうする?捨てる?」
「………。」
女の人の問いに男の子は首を横に振ってボロボロの靴を大事そうに抱えた。
「そう、ありがとうございました。」
女の人は立ち上がると笑顔で言った。
「行こうか。」
あたしは、勇人君の手を掴む。
「……ありがとう。」
勇人君が小さく言った。
「どういたしまして。」
あたしは笑顔で返事した。