第17章 危険な企み
「でもさ、この子にとって一番大事なのはさ、やっぱり親と暮らすことじゃないかな。」
棗はポンポンと勇人君の頭を軽く叩いた。
「え…?。」
「だってさ、どんな最低な親でも子供は親と一緒にいたいって思うもんだよ。それにさ、ずっと秋本さんの家にいるわけにはいかないでしょ?」
「うん…。」
たしかに棗の言うとうりだ。
勇人君の為に何が一番大切なのか考えなければいけない。
あたしだって、ずっとってわけにはいかないけど、パパとママと一緒にいたいって思う。
勇人君もきっと同じ気持ちなんだ。
「…だが、ギャンブル依存したやつを更生させんのは簡単じゃねーゾ?」
黙っていた秋本君が口を開いた。
「なんで?」
あたしは彼に問う。
「一回快楽を味わったやつは、また快楽を得ようとする。だが、パチ屋なんかは、最初にいい思いをさせて後から回収すんだよ。だから、最初に得た分よりも多い札がどんどんのまれちまう。また、それを取り戻そうと借金までしてしようとすんだ。で、結局最後にはすべて失う。だが、やめようと思っても体がパチをしたがる。……まぁ、ヤクみてーなもんだな。」
「じゃあ、やめられないってこと?」
「いや…そうじゃねーけど、並大抵なもんじゃねーぞ、更生させんのは。」
真剣な目で彼があたしを見た。
「とにかく、そういう奴らは周りがみえてねーんだよ。テメーのガキがいないのも気づかねぇ。例え…死んでもな。」
「………。」
あたしはゴクリと息を飲んだ。
世の中にそんな親がいるなんて思わなかった。
あたしは、パパは仕事で海外にいってるからいないけど、必ずママは居てくれた。
だから、親のいない子供の気持ちを考えたことなんてなかった。
いったい、勇人君はどれだけ我慢してきたのだろう。
どれだけ、帰ってこない親を待っていたのだろう。
そう思うと、辛くなった。