第17章 危険な企み
馬場団地はここからさほど遠くない所にある。
ただ、治安があまりよくない。
"泥棒団地"と言われている。
団地の周りもゴミだらけで、六階建ての建物も老朽化が進み、多くの在日の人や借金に負われている人がいっぱい住んでいる。
昔、そこには近寄ってはいけないと言われたことがある。
そこから学校に来ていた友達はよくイジメられていた。
"汚い"
と。
「お家、何棟の何号室?」
馬場団地の入り口で、男の子に尋ねる。
「四棟の10号室…二階。」
「わかった、行こうか。」
あたしは男の子の手を握ると歩き出した。
誠也君は黙って後ろをついてくる。
歩いているとすごい臭いがした。
山積みされた生ゴミや粗大ゴミから悪臭が漂ってくる。
思わず鼻をつまんでしまいそうだ。
本当にこんな所に人がすめるだろうか?
「そういえば、君名前何て言うの?」
男の子に尋ねる。
「…伊中 勇人(いなか はやと)。」
勇人君小さく応えた。
「お姉さん朝日 桜ていうの。あのお兄さんは秋本 誠也っていうんだよ。」
あたしは誠也君を指差した。
「………。」
けれど勇人君は見ずに俯いていた。
「………行こっか。」
あたしはまた勇人君の手を引いた。