第16章 嫉妬とイジメ
「松崎!!」
彼はさっきの中庭にいた。
ベンチに足を組んで煙草を吸いながら座っている。
紺色の半ズボンの体操服を腰パンにしているため下着が見えている。
「………。」
彼はあたしを見ずにただひたすら煙のあがる煙草を吸っている。
「松崎!!」
再び呼んだ。
けれど、やっぱりあたしを見ない。
「………。」
あたしは仕方なく彼の隣に座った。
「………。」
会話がない。
ただ、刻々と時間が過ぎていく。
「……あのさ。」
最初に口を開いたのは彼だった。
「……何?」
あたしは、松崎君の方を見た。
「俺…お前があいつと仲良くしてんの見るとスゲーむかつくんだ。」
「うん。」
「お前…アイツに対してよく笑うじゃん。だから――。」
彼は吸いかけの煙草を捨てると足でもみ消した。
「それでイジメてたの?」
「ちげーけど…あいつ見てるとスゲーむかつくんだよ。なよなよしてるし、あんましゃべんねーし。俺、そういう奴大嫌いなんだ。」
「だからってイジメちゃだめだよ。」
「……。」
「松崎。」
「……わりぃ、一人にしてくれ。」
彼はガシガシと頭を掻くと中庭を出ていった。