第15章 恋敵
あたしには、誠也君がいる。
だから、松崎君の事は関係ない。
「どうした、またなんかあった?」
靴を履きおえたあたしと誠也君は学校の靴箱にいた。
「うぅん、なんでも――きゃっ!!」
急に誰かがぶつかってきた。
そちらの方に目を向ける。
「源川さん?……どうしたの?」
そこには源川さんがいた。
しかも泣いている。
「なんかあったの?」
彼女に近付く。
そして、鞄からハンカチを出して差し出した。
パチン―――
けれど、振り払われた。
ハンカチが床に落ちる。
「なんで…なんであんたなのよ!!」
彼女が叫んだ。
周りの人が見ている。
「え…なにが――」
「しらばっくれんじゃないわよ!!松崎君あんたの事が好きなんだってね?」
「それは―――」
「何?しらばっくれるつもり?いいわよね、可愛い女はちやほやされて。あんたなんて、ただ可愛いだけでしょ?遊ばれてるくせに。」
彼女はあたしを睨み付けた。
汚いモノを見るような目で。
「おい、テメェ…。」
黙っていた彼が口を開いた。
眉間にシワを寄せている。
「いいよ、誠也君。」
あたしは彼をなだめた。
「なによ!!被害者ぶっちゃって!!アンタなんか痛い目に合わせてやる!!」
彼女は再び叫んだ。
「おい、クソ女(アマ)。桜に手出したら俺がゆるさねぇからな。」
ドスの効いた声で彼が唸る。
恐怖を感じる、あたしでも。
「…………っ――。」
彼女は一瞬怯んだ。
「うっうるさい!!あんた等二人覚えときなさいよ!!」
そういって彼女は走って行った。
「…まぁ、気にすんな。」
彼は落としたハンカチを拾った。
「俺が守ってやるから。」