第13章 悪夢
カツカツカツカツ――
ヒールが地面を叩く音が静かな辺りに響く。
迎えに来てくれた彼と、先程からしゃべれないでいる。
ふわふわと時折風で揺れるワンピースを手で押さえながらも、ただひたすらに地面を見ていた。
どうしてだろう。
かごのバックでさえ重く感じる。
中には、財布、化粧ポーチ、鏡、ハンカチ、ティッシュしか入ってないのに。
「…あのさ――。」
少し前を歩く彼が口を開いた。
「やっぱりお前、なんかあった?」
ドキッ―――
彼の言葉に胸がなった。
悪い意味で。
「…なんつーか…元気ねーから。」
彼が頭を掻く。
彼は決まって照れくさい時はそうする癖がある。
「…そんなことないよ。」
無理に笑顔を作った。
あたし、上手く笑えてる?
「………そっか。」
彼はそういうと煙草を取り出し、ジュッポで火を着けた。
ゆらゆらと煙があがってる。
「ならいいけど。」
彼は振り向いて笑った。
ズクン―――
なんだか胸が傷んだ。