第10章 嘘と助っ人
先輩の手は温かい。
大きくて、綺麗な指。
だけど、なにか違う。
傷だらけでゴツゴツとした手だけど、
いつも優しく包んでくれる手。
あたしはそんな手が好きだ。
たとえ同じような手があっても、あたしの好きな手はたったひとつ。
あぁ、彼の手が恋しい。
「乗って。」
改造されたバイクに股がりながら藤崎先輩は言った。
三段シートや日章カラーがないため、彼ほど派手ではないがマフラーが凄い。
あたしは、コクリと頷くと先輩の後ろに股がった
ブォンブォンブォン――――――
エンジンをかけると排気音が響いた。
そして、バイクは走り出した。
「………。」
走ってる最中、先輩は無言だった。
だから、あたしもなにも言わない。
あぁ、今頃彼は何をしているだろう。
ご飯をちゃんと食べているだろうか。
ひどい目にあっていないだろうか。
彼が暴行くわえたなんて絶対にあり得ない。
「ちょっと、寄りたい所あるんだけどよっていい?」
「え?あっはい。」
突然の先輩の言葉に慌てて応えた。