第10章 嘘と助っ人
たとえもうこの世にいない人でも、彼の好きだった人の事を聞くとなんだか胸が苦しい。
あたしだって好きな人はいた。
小学校の時も、中学の時も。
だから、彼に好きな人がいたっておかしくともなんともないはず。
ましてや、相手はこの世にいない人。
それなのにヤキモチ妬いてしまうあたしって、なんだか小さい。
望田さん達が帰った後、そんなこと考えながらあたしは無言でソファーに座っていた。
「どうしたん?」
藤崎先輩が不思議そうに覗いてくる。
「な…なんでもないです。」
無理に笑顔を作った。
「そっか。」
先輩は一瞬辛そうな顔をした。
なんで?
「さて、俺警察署行ってくる。誠也が心配だから。」
あくびをしながら西村先輩が言った。
「俺も。」
「俺も。」
「俺も行くけど、拓はどうするん?」
三善先輩が藤崎先輩を見た。
「俺は…暗いから桜ちゃん家に送ってから行く。」
藤崎先輩はチラッと此方へ目を向けて言った。
「わかった、……あっ。」
「なんだよ。」
「スケベなことすんじゃねーぞ?」
笑いながら三善先輩が言った。
「ばーか、しねぇよ。さっ、行こ。」
そういって彼はあたしの手を握った。