第9章 冤罪
8月の始め。
あたしは誠也君の家にいた。
幹部の人達も来ている。
「…でよ、ババアが入って来やがったんだよ。」
竹井先輩が煙草を吸いながら言った。
「マジかよ!?ついてねーな。」
「だろ?マジでびびったよ。」
「ハハハ、災難だな。」
男の人達で話が盛り上がっている。
あたしは、その中に入れないでいる。
というか、さっきから変な話ばっかだ。
ベッドの上でうずくまって耳に蓋をした。
「どうしたん?」
藤崎先輩が隣に座ってきた。
「…いえ、なにも。」
「元気ないね。あ、もしかして俺達の話嫌だった?」
「そういうわけじゃ…。」
あたしは顔を上げた。
あ…。
煙草を吸う誠也君と目が合った。
"すき"
彼の口がそう動いた。
顔が一気に紅潮する。
「…顔赤いけど熱あるん?」
藤崎先輩の手が額に触れる。
顔が近い。
「だっ大丈夫ですっ!!」
あたしはとっさに離れた。
そして、誠也君の顔を見た。
彼は不機嫌そうに眉間にシワを寄せている。