第9章 冤罪
「おい、兄ちゃん。どっかの族なわけぇ?」
交差点の赤信号で止まっていると、二人乗っているバイクが隣に止まった。
後ろにも。
反対側にも。
あたしたちを囲むように止まっている。
赤い特効服で、手には木刀や沢山の釘が刺さったバットを持っている。
「うせろ。」
唸るように誠也君は言った。
彼等を見ようとはしない。
「あれれ〜?女の前だから意気がっちゃてんの?」
「ねぇ女の子、こっち向いて〜。」
気持ち悪い声で男達が喋っている。
「わぁ、女めっちゃ可愛くね?」
「本当や。」
顔も気持ち悪い。
あたしは彼の背中に顔を埋めた。
「………。」
彼は信号が青になると無言でバイクを走らせた。
「待てよ、逃げんな!!」
男達が追ってくる。
「女置いて、ステッカー買えや!!」
モヒカン頭の男が、"白麗魂(はくれいこん)"と書かれた赤いステッカーを出してきた。