第9章 冤罪
7月の終わり頃。
今日は終業式だ。
その為、学校がはやく終わった。
「もう夏休みとかはやいね。」
ぞろぞろと帰宅する生徒たちの中にあたしはいた。
隣で彼が煙草を吸っている。
「そうだな。」
「夏休みも一緒に居れる…かな?」
彼の様子を伺いながら尋ねた。
出来れば一緒にいたい。
学校がある時みたいには会えないかもしれないけど、
やっぱり一分一秒長くいたい。
「あたりめぇだろ。」
大きな手で包み込むように、彼はあたしの頭を撫でた。
嬉しい。
撫でてもらったのもそうだが、彼と居れると思うと夏休みが楽しみでしかたない。
自然と笑みがこぼれた。
「夏休み、なんする?どっか行くか?」
彼が、ゆったりとしたズボンのポケットから煙草を取りだしくわえた。
「うん。」
「集会も連れてってやる。」
「えっ…でも――。」
あたしなんかがいても良いのだろうか?
大事な集まりなのに。
様子を伺うように彼の顔を見た。
「気にすんな。オメェも家族みてぇなもんだから。」
再び、頭を撫でられた。
"家族みてぇなもんだから"
その言葉で、頬が熱を持ったように紅潮した。
好きって言葉も、愛してるって言葉もどちらも嬉しい。
だけど、家族と言われるとそれらとは違った嬉しさがあった。