第1章 彼氏
「誠也君…。」
「お前……。」
あたしの姿を見て目を見開く彼。
今あたしどんな格好してるの?
結局鏡で確認することの無かったあたしはドキドキしていた。
「……。」
けれど彼は何も言わずに自分のブレザーを渡してきた。
着れということですか?
心の中で問いかけてみる。
「………。」
私は無言で受けとるとそれを羽織った。
やっぱり好かれてない。
愛されてないんだ…。
そう考えると涙が溢れだしそうになる。
せっかく皆が協力してくれたのに。
意味……ないよ。
そして、何時もの帰り道を何時ものように歩く。
もちろん無言。
電車に揺られていても1度も此方を見ようとはしない。
それどころか隣で不機嫌そうに目を閉じ腕を組んで座っている。
だからあたしも彼の方に目を向けなかった。