第6章 思い出
それから、彼は無口になった。
いや違う。
怒ってるんだ。
電車に揺られながら、隣の彼は目を閉じている。
そして、腕組み。
本当に分かりやすい人。
そういう所は子供っぽい。
結局、彼の家まで会話はなかった。
「……。」
静かな部屋。
この紙袋のせいで彼を怒らせた。
"ホントはこれあなたのなの"
それが言えたらどんなに楽だろうか。
「……。」
だまって彼はバイクの雑誌を見ている。
パラパラという音が重くのしかかってくる。
「………。」
あたしどうしたらいいの?
携帯を取り出し待受を見た。
誠也君の寝顔。
こんなに可愛い寝顔をする彼は今怒ってる。
あたしは、チラリと彼を見た。
あ……。
目があった。
じっとあたしを見つめている。
あたしも彼を見つめている。
「………。」
パタン。
本を閉じた彼が近づいてきた。
チュッ…
唇が触れた。
チュッ…
キスされた。
チュッ…
何度も。