第6章 思い出
「わりぃ…。」
頭を掻きながら彼は言った。
「え…?」
「なんつーか、お前に隠し事されると…ムカムカするっつーか…なんつーか…――。」
「誠也君。」
そんな彼を見ていると、今渡さなきゃっておもった。
だから、あたしは紙袋から包みを取り出した。
「これ…。」
「何?」
「今日、誠也君の誕生日だから…喜んでもらえるといいな。」
あたしは、笑った。
「桜……。」
「開けてみて。」
そういうと、彼は包みを開けた。
「これ…。
中に入っていたのは綺麗になった紫の特攻服。
彼の思いでの品。
ギュッ―――
彼は何も言わずにあたしを抱き締めた。
「すげぇ嬉しい。俺の大事なもんだったから…―――。」
彼の腕に力がこもる。
「誠也君…着てみて。」
「分かった。」
彼はあたしを放すと立ち上がってそれを羽織った。
紫の特攻服。
"愛は力ではなく愛で守れ"
大きな背中に金色で刺繍された文字。
その意味を、今ならわかる気がする。
仲間を思う上田さんの気持ち。
それが、あの文字に表れている。
「なんか…上田さんがいるみてぇだ。」
彼は写真を見た。
写真の中の上田さんは笑っている。
今の彼を見守るように。
「もっと俺は強くなる。そして、いつかあんたを越えてやる。」
そう言って拳を握った。
何だか彼の後ろ姿が上田さんに見えた。