第6章 思い出
「ところで、極使天馬の3ヶ条を覚えてるか?」
藤崎さんは、灰を灰皿に落とした。
「はい!!」
「言ってみろ。」
「1、女、子供、老人には手をあげない。2、裏切り禁止3、仲間を大事にしろ。」
「そうだ。俺等は族であって仲間だ。家族みてぇなもんだ。だから、守るのはあたりめぇだろ。けど、もう勝手な真似はすんじゃねぇぞ?分かったな?」
「はい。」
「…ところで、朝日さん?」
「えっはい!!」
突然藤崎さんに話をふられてあたしは焦った。
「あいつのどこが好きなわけ?」
「え?」
「だってさ、あいつ無愛想じゃん昔から。だから、女にモテねぇんだよ。」
「誠也君は…あたしの前じゃよく笑ってくれるんです。それにあの大きな手が大好きなんです。」
あたしは笑った。
「マジで?あいつがよく笑う?ありえねー!!」
西村と呼ばれた人は驚いていた。
「それにしても、あんた可愛いからアイツも大変だろうな。」
煙草の火を消しながら藤崎さんが言った。
「かっ可愛くないです。」
「いや、可愛いって。あいつの彼女じゃなかったら―――」
「人の女口説いてんじゃねーよ、拓。」
後ろから聞き覚えのある声がした。
「誠也!?お前起きてたんか!?」
「あたりめーだ。くたばってたまるかよ。」
誠也君は藤崎さんの隣に座って煙草を吸い始めた。
「煙草はダメ、傷によくない。」
あたしは彼の口から煙草を取り上げた。
そして、灰皿で消した。
「……はい。」
「彼女に頭が上がらねーな。県内最強が聞いてあきれるわ。」
ハハハと皆が笑った。