第58章 魔王と捕らわれ姫と裏切りとそして守る者
「大丈夫か?」
彼の手があたしの手に触れる――
ガシッ――
「ワシは終わらん!!頂点に立つんはワシやッ!!」
はずだった。
けれど口から血を垂らした江田の腕が私の首を捕らえた。
懐から出した拳銃の銃口があたしのこめかみに当てられる。
あと少しなのに。
手に届く距離なのに。
彼がずっと遠くに見える。
「クズだな、お前は。」
唸るように宗次郎が言った。
「クズ?違うわ。要領がええんジャ、ワシは。」
鼻で笑いながら後ろへズルズルと下がっている。
「要領がいいわりには騙されやすいのね。」
入り口の所まで下がった時、女の声と共に江田の背中に何かが触れた。
カチャリ―――
機械音が聞こえてくる。
拳銃だ。
「……レイカ……。」
江田の眉間に大量のシワがよる。
「タカ、約束守れなくてごめん……でも、こいつを殺さないと気がすまないの。」
レイカの目が藤堂へ向いた。
そして、再び江田を睨み付ける。
「あたしのお母さんを捨てた男の息子をね!!」
「なん…やと――。」
江田の目が見開いた。
動揺したように瞳が揺れている。