第58章 魔王と捕らわれ姫と裏切りとそして守る者
「ワシはこんなところで死なんのやッ!!」
加藤の草履が地面を蹴った。
ドスを片手に滝田に突っ込む。
パァン――
乾いた音がした。
しかし痛みはこない。
パァン――
パァン――
それは何度も続いた。
パァンッ―――
滝田が間近で撃った。
ジュッ―――
弾丸が肩をかする。
「や―――」
滝田が悲鳴をあげそうになった。
「岩中の番犬を舐めるんやないでッ!!」
ズシャあッ―――
降り下ろしたドスが、滝田の身体を切り裂いた。
血飛沫が雨となり加藤に降り注ぐ。
ドサァ―――
滝田がゆっくりと地面へ崩れ落ちた。
「どうや、守り抜いて…やったわ。」
ハァハァと息を切らしながら肩にドスを置き、上から滝田を見下ろす。
「何かっこつけとんのジャおどれは。」
「情けない、番犬が聞いて呆れる。」
後ろから声がした。
加藤が振り向くと、拳銃を持った血塗れの善司と畠中が立っていた。
さっきの銃声は彼等のものだったようだ。
「オッサンと……誰やねん?」
「誰がオッサン――」
「白川組の若頭の畠中だ。」
「さよか。」
ドサッ―――
加藤はゆっくりと地面に座り込む。
「やっぱりおどれは"ブサメンで弱くて頭が悪い"がよう似合うんジャ。」
善司が笑っている。
「うっさいわ。」
加藤も笑った。
「まだケリはついていない。やるべき事はまだある。」
そう言って畠中は二人に背を向けた。
「そやな。」
「豪龍会の好き勝手にはさせんわ……花村にもな。」
二人もそのあとに続いた。