第58章 魔王と捕らわれ姫と裏切りとそして守る者
なんだろ、ガヤガヤと周りがうるさい。
重たい瞼をゆっくりと開けた。
「え?」
状況が理解できない。
誠也君や宗次郎さんに白川?
それに小学生までいる。
こっちは、堀田さんに…アレ誰だこの人?
強面の金髪の男の人に目を向ける。
もしかしてこの人が例の"江田"という人だろうか。
て、ことは…
あたし誘拐された!?
やっと状況が理解できたあたしはあたふたと辺りを見渡した。
「親父、女が起きました。」
男があたしを下ろすと江田に耳打ちした。
「来い。」
そう言って束ねてある髪を掴まれた。
「痛っ――」
乱暴な為、頭皮が痛む。
「テメェッ!!」
「やめろ!!」
誠也君が今にも飛びかかりそうだったが、宗次郎さんが叫んでそれを制した。
「………っ―――。」
悔しそうに誠也君が拳を握りしめている。
「この小娘が大事かぁ?なぁ…宗次郎?」
ニヤニヤと江田が宗次郎さんを見ている。
「痛い……。」
あまりの痛みで涙が目からこぼれ落ちた。
じゅるッ――
生暖かいものが頬をたどった。
舌だ。
それも江田の。
ゾクゾクと全身に鳥肌が立つ。
あまりの恐怖で涙が線を切ったように溢れだしてきた。