第58章 魔王と捕らわれ姫と裏切りとそして守る者
「嘘だろ……なんでここに…。」
目の前の出来事に誠也は動揺していた。
彼だけではない。
宗次郎もまた、顔には出さないものの心の中では動揺している。
その証拠に、瞳が揺れていた。
「ワシは欲しいもん手に入れる為やったら手段は選ばん。例え小娘でも使えるもんは使う主義や。」
「ほんと、クソやの。」
藤堂が吐き捨てた。
「頭がええと言わんかい!!クソガキがッ!!」
鋭く江田が藤堂を睨み付けている。
「いや、そいつの言う通りお前はクソだ。まぁ、頭の使い方は極道らしいがな。」
鼻で笑いながら白川が江田を見ている。
「……こそこそクソオヤジの所に来とる奴に言われとうないわ。女がよく言うあれや。"泥棒猫"、まぁ、あんな死に損ない盗まれようが知ったこっちゃないがな。」
江田が高笑いしている。
ブーブー……
それを見ながら突然なり始めた携帯を誠也は手に取った。
「どうした、拓?……目の前にいるよ、豪龍会の奴等に人質に取られてる。だから、電話切るな。」
そう言って彼は携帯をしまった。